第115回労働法研究会
『改正派遣法をめぐる実務的留意点』


〜改正派遣法のポイントや、派遣労働者を活用する際に注意すべき留意点を解説〜


講師 :弁護士 石嵜 信憲 氏


 
 労働者派遣法が労働力需給の迅速、円滑かつ的確な結合を図ることを目的として、平成16年3月1日から改正施行されています。そこで今回の労働法研究会は、派遣法の改正により、どのような点に注意すれば良いのか等のポイントや、派遣の有効性や考え方等について専門家より解説いただきました。

製造業派遣解禁に伴う対応

 今回の派遣法改正では、特に製造業への派遣が可能となったことが大きな特徴の一つである。しかし製造業への派遣解禁に伴って、請負等を偽装した労働者派遣事業は従来より厳しく判断されると考えられる。
 派遣と業務委託や請負との決定的な違いは、利用者が指揮命令権を有するか否かである。すでに外部労働力を利用している製造業者においては、派遣か業務委託であるかどうかを再チェックしなければならない。偽装請負と判断されるような業務形態をとっているのであれば、適法な業務委託に是正するか、形態として派遣法の適用を受けるかの対応が必要である。

安全配慮義務

 派遣労働者は派遣先の事業場内において就労し、更には派遣先の指揮命令下において労務提供しているので、派遣労働者に対する安全配慮義務は派遣先も負担することになる。従って今回製造業への派遣解禁により、大型機械などが導入されている工場の現場においては、慣れや技術的なレベルの不足に伴う派遣労働者の安全配慮に厳重に注意すべきである。製造業への派遣解禁によって、今後事故の発生率がどうなるかが心配される。


団体交渉義務

 使用者は、雇用する労働者が加盟する労働組合と、労働条件や待遇改善について団体交渉に応じなければならない。請負の場合、発注元企業が団交に応じなければならないとの判例が最高裁で出されたケースもある。派遣形態の場合、派遣法40条(派遣先は労働者から苦情が出た場合、派遣元に通知するとともに誠意をもって対応処理しなければならない)に基づき、原則として派遣元企業が団交に対応する。

派遣等外部労働者の利用比較

 外部労働力を利用する際に、各利用形態を検討するポイントとしては、(1)労働力の有効活用、(2)人件費の低額化、(3)人件費の流動費化の3つの視点から検討する必要がある。
 その中で労働力の有効活用についての最大のポイントは、利用者がその労働力に対して直接指揮命令を行えるか否かである。直接指揮命令を行ってこそ利用者の意思が労働力に充分反映され、生産性を高めることに繋がるからである。その点では、指揮命令権を持たない業務委託や請負よりも、指揮命令権を持つ派遣は有効といえる。しかし、製造業における派遣期間は現段階では1年に制限されており、派遣労働者へ直接雇用の申し込み義務が生じる。その場合、契約条件については自由度がある(但し、期間の定めのない契約)。


まとめ

 企業における労働力利用において、正社員やパートなど直接契約の形態と、派遣や業務委託など外部労働力を利用する形態の双方を、どのように組み合わせて活用するかがポイントである。

以上